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死霊のはらわたに見る美しい恐怖のパターン

 正月にはまったくもってふさわしくない話題ですが、このあいだ、「死霊のはらわた」のリメイク版をDVDで見ました。リメイクはまあ、うん、という感じだったのですが、サム・ライミが監督したオリジナルの死霊のはらわたにはものすごく思い入れがあります。たぶん小学校3年生くらいだったと思うのですが、それまで大魔神とかオーメンでびびっていたわたしにとって、ものすごい衝撃受けたのを覚えています。

恐怖とはなにか

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%90%E6%80%96

人間が恐怖状態に陥ると、脚などの筋肉に血液が集中され、これにより人間はより素早く行動することが可能となる。また、身体は瞬時の凝固を起こし、これはより優れる反応(例:隠れる)の有無を大脳に判断させるためである。大脳では、ホルモンが分泌され、これにより脅威に対する集中が高まり、最も正確な反応を分析する。

 恐怖とは、危険から身を守ろうとする本能的な感情です。ある程度大人になると、ジェットコースターと同じように、刺激を楽しむことができるようになります。ホラー映画も恐怖を生み出すことで、見ている人を緊張状態におくことができます。美しい笑いや美しい論理と同じように、美しい恐怖というものが存在するとわたしは思っていて、ただ内蔵が出たりグロいだけのものは、下ネタみたいなものでホラーの中でも下等な部類に入ります(わたし基準)。意外性があって、巧妙で、ああこれは怖いなあ、やられたなあというのが美しい恐怖です。いかに美しく恐怖を生み出せるかでホラー映画の価値が決まります。ちなみに、あの荒木飛呂彦先生も、かわいい子にはホラー映画を見せよとおっしゃっています。

荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)

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 で、恐怖を生み出す要素というものをいくつか考えてみます。

生理的に気持ち悪い

 内蔵とか、血とかウジ虫とかそういうやつです。オリジナルの死霊のはらわたでは死霊の口から牛乳みたいなのがだらだら出てくるのが怖かったです。

 上にも書きましたが気持ち悪いだけのものはレベルが低いといわざるを得ません。気持ち悪い系の映画で唯一わたしが好きだったのは、小学生のときにテレビで見た「スクワーム」という映画です。ミミズが凶暴化して人を襲うというもので、ミミズの大群に人が飲み込まれて終わったような記憶があります。あの中はどうなっているんだろうと想像すると怖さで眠れなくなりました。昔はこんなのを昼のテレビでやっていたというのもすごいです。

自分に危害を加えようとする相手がいる

 これはもう王道ですね。ゾンビはたいがい襲ってきますし、ジェイソンもフレディもチャッキーも貞子もみんなしゃかりきに殺そうと向かってきます。同じ危害を加えられそうな相手であっても、小柄な女性よりは大男とかプレデターのほうが怖いです。もしくは、自分に半端ない怨念を持ってそうとか。要は抵抗しても太刀打ちできなさそうな相手のほうが怖いということでしょう。そう考えるとやっぱり「ミザリー」は怖いです。

驚く、びっくりする

 悪いやつは突然でてきてびっくりさせるものです。ときには驚かせるためにわざわざクローゼットの中に入っていたり、地下室に隠れていたりします。最近はあからさまなの少なくなりましたが、それは観客がなれてきて、もうすぐ驚かせるつもりだなというのがだんだんわかってきたからでしょう。びっくりさせる映画の代表例はあまり思いつかないのですが、「震える舌」かなあ...

不安、身の危険を感じる

 路地裏とか、狭い部屋とか、とりあえずは危害を加えられることはないのに、不安を感じさせるものがあります。なにか起こるかもしれないという想像力によって恐怖が生まれます。 寂しい絵や音楽など、理由はないけどなんとなく怖いものもあります。それらの多くは苦痛や死を連想させるためだと思います。「シャイニング」で子どもが三輪車で走るシーンでは、ホテルが意思を持って誘導しているような怖さを感じます。

シャイニング [Blu-ray]

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得体が知れない、理解できないもの

 対象がなんであっても、人は理解を超えるものに恐怖を感じます。意思を疎通させることができない、何をされるかわからないという怖さです。エイリアンやモンスターの類いがそうですし、人間であっても、目の前の人が突飛な行動をとると怖いと感じます。

 「悪魔のいけにえ」の冒頭で、車に乗り込んできたヒッチハイカーが突然自分の手でナイフで切りつけるというシーンがあります。そのあとも散々いやがらせのような行動をとるのですが、こういう相手が何を考えているのかわからないというシチュエーションはとても怖いです。

もっと怖いもの

 恐怖を生み出す要素をいくつか挙げてみました。実際の映画などでは、単一の要素ではなくて、組み合わせだったり、さまざまなバリエーションやシチュエーションを工夫して恐怖が作り出されています。中でも、わたしが好きなのは、「相手に欺かれていたことを知ることで恐怖が倍増する」パターンです。

 「偽の警察官」という有名な都市伝説があります。

偽の警察官 - Wikipedia

 この話の恐怖を持つ要素としては、偽の警察官が自分に危害を加えようとしていた(かもしれない)ということだけです。このことを聞き手は、物語の最後に知ることになります。信用していた警察官が自分を欺いており、本当は危険な状態であった(ある)のに自分はそれに気づいていなかったことを「知る」ことで、それまでの弛緩状態から急激な高低差が生まれ、恐怖が2倍、3倍にも増幅されます。これが美しい恐怖です。単純に「自分に身の危険があること」に気づくというだけではなく、誰かが自分を「欺いていた」というところがポイントです。毒がただそこにあっても怖くはありません。毒を飲ませようとする人が怖いのです。

 他にも、このテクニックは多くの都市伝説で用いられます。興味があれば探してみてください。

怪談都市伝説 - Wikipedia

 だんだん死霊のはらわたどうでもよくなってしまいました。今年もよろしくお願いします。