美術館にいったらどうするか教える
3連休だ。夏は美術館にいくのがおすすめだ。美術館はクーラーが効いていて涼しいし、混雑もしていない。料金も1200円くらいでライブを見るより安い。わたしはたまたま夏休みで今日からまた沖縄にいくんだけど、そうでなければ新美術館のオルセー展か、六本木ヒルズのガウディの展示会を見に行っていたと思う。というか帰ったら行こう。
絵画に興味がない人に美術館の楽しさを説明するのは難しい。まわりにも美術館に行くのが趣味だという人はあまり多くない。わたしも20歳くらいまでまったく興味がなかった。結婚して京都に旅行に行ったときに、時間をつぶすためにたまたま立ち寄った美術館で印象派の展示会をやっていた。そこでルノワールの、「ピアノを弾く少女」を見た。ルノワールというのは日本橋あたりでサラリーマンがたむろする喫茶店の名前だというくらいの知識しかなくてそれはルノアールなのだけどわたしは画家の名前はルノアールだと思っていた。ルノワールが描いた白い少女の肌の色は絶妙で、垂れた金色の巻き髪からは幸福さが溢れていた。なるほどこれは美しいものだなと思った。それから国内の美術展を見て回るようになった。鮮烈だったのは上野のプーシキン展で見たマティスの金魚だった。わたしは1時間近く同じ絵の前に立っていてそれでも帰るときに後ろ髪をひかれた。海外に出張に行ったときも、時間が許す限り美術館を訪れるようにしている。ホーチミンや上海にも美術館があってそれなりに趣のある作品が展示されていた。サンフランシスコのリージョン・オブ・オーナー美術館もよかった。
日本の美術展にいくと、たいてい入り口のところに行列ができている。不思議なことに、出口に近づくにしたがって混雑は少なくなる。わたしはだいたい、入り口近くの作品はすっとばすか、興味がありそうなものだけを軽く見ることにしている。美術展は並んで最初から順番に見ないといけないというルールはない(はずだけど違っていたら教えてほしい)。入り口近くのものは習作とか小粒なのばかりなのでそんなにまじめに見なくてもいい。あと、音声の作品ガイドみたいなのを借りられるところが増えているけど、わたしは借りたことはない。あんなものをつけていると邪魔だし、絵を見るうえで作品の背景を知識として得ることが重要だとも思わない。ただ聞きたい人は借りればいいと思う。
普通はひとつの展示会で、目玉の作品というのがひとつふたつある。そういうものは人気があるので、絵の前に行列ができる。近くで見たい人は行列に並ぶことになる。じっくり見たい場合は行列の邪魔にならないように、少しうしろで立ち止まって好きなだけ見ていればいい。好きな絵の前に立っていると、おなかのあたりがぽかぽかと暖かくなってずっとその場に立っていたくなる。この感覚は音楽を聴いているときとも似ているが、また独特なものだ。幸せな時間だな、と感じる。
せっかくなので独断で一度実物を見て欲しい作品を紹介してみる。
バレリーナの作品が有名。2010年に来日。
あまり有名ではないけどモノクロ主体の濃淡で描く画風が特徴的で大好きな画家。2006年にカリエール展があったけど残念ながら行けなかった。上野の西洋美術館に常設している作品がある。
マネ Berthe Morisot with a bouquet of violets
モネじゃないほうの人。2010年に来日。
モディリアーニ Portrait of Jeanne Hebuterne with her Left Arm Behind her Head
印象的なスタイルの人物画を多く残している。2008年に国立新美術館でモディリアーニ展があった。
バルテュスが描く少女と猫はみな不機嫌そうで、みな美しかった。2014年来日。京都では今個展やってるはず。20世紀最後の巨匠と呼ばれて2001年に亡くなった。
フェルメール The Girl with a Pearl Earring
巨匠中の巨匠。ふだんは1800年代後半の絵ばかり見るんだけど、この人だけは別格。2012年に来日。これも行けなかったのが悔やまれる。
ルノワール Mlle Irene Cahen d'Anvers
2010年来日。もうルノワールだけでごはん3杯食べれる。息子も映画監督として作品を残している。若いころはこんな絵を描いていたのに、晩年は太った女性ばかり書いていたのはなんか考えさせられる。
絵の傾向というか対象が似ているのはたまたまです。