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あの裁判の傍聴にいってみた

こちらのブログを読んだ。

裁判員をした友人に裁判員制度の流れとか詳細を聞いてみた - 941::blog

前から裁判員には興味があったんだけど、なりたいといってなれるものでもない。そういえば裁判て誰でも傍聴できるんだよなと思いながら、帰宅中の電車で裁判所のサイトを見ていた。一般的な裁判は誰でも好きなときに法廷へ入っていいらしい。途中で入っても、途中で出て行ってもいいらしい。どんな裁判をやっているんだろうと思ってサイトをまわっていたら、「傍聴券交付情報」というページがあった。傍聴希望者が多い裁判では、傍聴券というものを抽選で交付する仕組みになっているらしい。どの裁判で傍聴券が交付されるかは、ネットで公開されている

東京地方裁判所で傍聴券が交付される予定のものは3件あった。そのうちの1件が目をひいた。

東京地方裁判所  刑事第4部

日時・場所  平成○年○月○日 午前9時30分 東京地方裁判所1番交付所

事件名  航空機の強取等の処罰に関する法律違反等 平成25年合(わ)第48号等

備考  <抽選>当日午前9時30分までに指定場所に来られた方を対象に抽選します。開廷時間は午前10時00分です。

航空機の強取って、日本でハイジャックなんてあったっけと思いながら、何の気なしにググってみたら、あの事件の裁判だということがわかった。他人のパソコンをウイルスで遠隔操作して、航空機の爆破予告を行ったことがハイジャック防止法違反にあたるということなのだろう。わたしは前にハッカーが登場する小説を書いたことがある。書いていたとき、まだ容疑者は否認を続けていた。だから物語の背景としてこの事件を匂わせるエピソードを加えた。書き終わってひと月ほどたった後、ニュースで、事件の決定的な証拠が見つかって犯人が自供を始めたことを知った。日本では類を見ないほどメディアの注目を浴びたコンピューター犯罪であり、動向には関心を持っていた。なので、この裁判を傍聴にいくことに決めた。

2オクロック

2オクロック

当日、9時ごろに東京地方裁判所に到着する。霞が関駅のすぐ目の前にある。裁判所のまわりには別の事件で冤罪を主張する支援者たちがビラを配っている。あまりにも物々しすぎて、思わず建物を素通りしてしまうが、このままだとなんのために会社も半休をとってのこのこやってきたかもわからないので、気を取り直して裁判所の建物の中に入る。入口のところでは飛行機の手荷物検査場と同じように荷物を検査され、金属探知ゲートを通らなければいけない。裁判中に遺族が犯人を襲ったりしないのだろうかと思っていたけど、当然のことながら対策が取られているのだとわかった。守衛の人に1番交付所はどこですかときいたら、外だという。しかもまだ早すぎるので20分くらいに行ってみてくださいとのこと。守衛の人に礼をいったら、近くにいた特徴的な外見のおじさんにも、まだ早すぎるよ!と念を押された。そのおじさんは常連なのかわからないが受付のところでいろんな資料をチェックしたり、すぐあとで来たちょっと派手な感じの若い女の人とキャッキャおしゃべりをしたりしていた。知らない世界を垣間見た気がした。それから、交付所に行ったら整理券をくれた。最初は20人くらいしかいなくて、定員は30名くらいと聞いていたので全員入れるんじゃないかと思っていたけど、最終的には100人くらいになっていた。裁判ウォッチャーで有名なあの芸人さんもいた。もちろんさっきのおじさんと女の人もいた。ほぼ男性はスーツで、ジーパンをはいているのはわたしと、あと2、3名くらいだった。ちょっと浮いていて場違いな感じもしたが、わたしは決してHEROにかぶれたと思われたくはなかったので、努めて自然体をよそおった。

係の人が来て、これからコンピューター抽選を行うので、当選した人は整理券をもって法廷にきてくださいという指示があった。ではこちらへと通されて、歩いて行ったら、最初に整理券をもらったあたりではずれの整理券を回収しますという人が待っている。わたしのまわりの人たちはどんどん整理券をその人に渡して帰ってしまった。わたしはコンピューター抽選というのでひとりずつパソコンのボタンかなんかを押して、ピコンピコン、イエーイ当たった!とかやるのかと思っていたので、いつのまに当選が決まったのか、出来レースか! と思ってうろうろしていたら、番号の書かれた紙が張り出されてあって、そこに自分の整理券の番号があれば当選ということだった。完全に流れに乗り切れずにまたうろうろして、紙を見たら自分の番号が書かれてあった。

もう一度手荷物検査場をとおって建物の中に入って、エレベーターで8階にあがる。さっきのおじさんも女の人もいた。ものすごい強運な人なのかもしれない。そこで整理券を渡すと、手荷物をすべて没収された。法廷に持ち込んでいいのは、筆記用具とメモ、それに貴重品だけらしい。わたしはめんどうなので財布もリュックにつっこんで預けた。裁判所で働いている人の中に泥棒がいて財布なんか盗られていたらなんか面白いと思ったからだ。荷物を預けるとひとりずつ、さらに入念なボディチェックが行われた。筆箱とか、メモ用紙の中まで見せないといけない。それが終わると、法廷の前に並ぶか、待合室で待ってくださいといわれた。わたしはとりあえず並んで待つことにした。しばらく待っていると検察の人たちや弁護士の人がわれわれの前を通って法廷へ入っていった。なんでわかるかというと、いちいち検察官はいりまーすとか教えてくれるからだ。テレビで見たことのあるジャーナリストの人もちらほらいた。

で、ひととおり準備ができると、順番に法廷にとおされた。部屋は想像よりもだいぶ小さい。被告との距離は5メートルもなかった。前後3列の席があって、右側の一部分は報道関係者用になっている。わたしは素人なので2列目の席に座ったのだけど、部屋が狭く傾斜がないので前の人の頭で見えづらい。一番前に座るのがいいと思う。

裁判の内容は詳しく書かないけど、非常に興味深かった。検察と証人とが見せる高度なディベート技術は、見ていて緊張感があったし、コンピューター上の痕跡の検証については専門分野なので証言のあらを発見したり、自分なりに思うところもあった。審理は約2時間だったけど、あっという間に終わった印象がある。特に今回のは注目度の高い事件の裁判であるためか、検察側も弁護側も、ある種のオーラを帯びて見えた。外見、たたずまい、話し方など担当者それぞれに個性があった。いわゆるキャラが立っているというやつだ。そういえば被告もそうとうキャラが立っている。無責任にいえば、劇場にいるような感覚だった。法曹の世界というのはそういうところなのかもしれない。

この日の審理が終わって、外から写真を撮って裁判所をあとにした。ただで2時間もこんな面白い体験ができて満足だった。また行ってみたいと思う。

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