仕事を奪うのは機械やロボットじゃない
Googleのエリック・シュミット会長が執筆した「How Google Works」をkindleで読んでいる。本の内容をまとめたスライドがGigazineでも紹介されている。
この本では、今起こっている競争条件の変化として、以下を挙げている。
- インターネットから膨大な情報を無料で入手できるようになった。
- モバイルデバイスでの常時接続が実現した。
- クラウドコンピューティングによって、高度なサービスを安価に受けられるようになった。
そんな変化はインターネットが普及し始めた20年前から起こっていると思われるかもしれないが、それは違う。かつてAmazonが書店を追いやったというような文脈とは明らかに違うドラスティックな変化が今起こっている。アメリカの主要都市では、タクシーを拾う代わりにスマホでUberを呼ぶ。運転手のプロフィールや写真が表示され、車が今どこにいるか、あと何分でやってくるか地図でいつでも確認できる。料金はUberのアカウントを使って自動的に引き落とされ、クーポンも使える。日本ではまだ六本木周辺でしか利用できず料金も安くないが、サービスが拡大されれば、わざわざタクシーを探して歩きまわったりしなくてもよくなる。これは今この瞬間に起きている変化だ。
先日、サンフランシスコでいくつかのシリコンバレー企業のオフィスを訪問した。よくいわれているように昼食が無料などというのは当たり前で、自転車の整備室やシャワールーム、ヨガルーム、瞑想をするための専用の部屋まである企業もあった。ペットやこどもを連れてくるのも自由だし、出退勤の時間も自由だ。
これらを見て、さすがアメリカはスケールが違うとか、こんなところで働いてみたいと思ったりするのだけど、ふと費用対効果を考えたときに、果たしてヨガルームが生産性を高めたりするのだろうかという疑問が浮かぶ。そして、その答えは「How Google Works」を読むと腹に落ちる気がする。彼らは社員の福利厚生を充実させたいためにこんなことをやっているのではなく、超優秀な人材を雇うため、彼らに企業文化を示すために大金を使っている。サンフランシスコではエンジニアの賃金はおそろしく高い。地価もニューヨークよりも高くて、1LDKで平均して35万くらいするそうだ。普通にウエイトレスのような仕事をしていたのではとても生活していけない。シリコンバレーで会ったイケメンのエンジニアは、オタクが女の子を町から追い出したのだと嘆いていた。
国内に目を向けてみると、こんな記事があった。
2020年「なくなる仕事」
この記事は、多くの仕事が機械やロボットに取って代わられると予想している。5年後にはアウトソーシングやコモデティ化によってプログラマーの仕事はなくなるのだという。機械やロボットによって人間の仕事が奪われると書かれている。おめでたい話だと思う。こういった記事は、いまだに大企業主導のグローバル化やオートメーション化、合理化によって、特に若い人たちの仕事が失われるというような印象を与える。
若い人たちにとって、単純作業や肉体労働は旧体制のオートメーション化によってとっくに奪われている。これから奪われるのは、参入障壁の高い既得権益に守られた産業、それから自ら価値を生み出さずに中間マージンを取るだけの不動産やディストリビューターのような仕事で、奪うのは小さなチームからなる若くて優秀な起業家やエンジニアたちだ。
そういう未来が早くくればいいと願っている。
How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント
- 作者: エリック・シュミット,ジョナサン・ローゼンバーグ,アラン・イーグル,ラリー・ペイジ,土方奈美
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2014/10/09
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る