UI/UXがもてはやされる理由

f:id:ryokdy:20140615220902p:plain

この数年の間で、UI/UXという言葉をよく聞くようになった。

Google Trendsで見てみるとキーワードのトレンドが右肩上がりなのがよくわかる。

Google トレンド

なぜユーザビリティやUI/UXといった言葉が大流行かというと、大きな理由はWebサービスやスマホアプリのビジネスが拡大したからだ。それまでの主流だった買い切り型のパッケージソフトウェアであれば、顧客が購入した時点で、売り手側の目的は達成されている。それに対して、Webサービスの多くは継続課金や広告モデルだから、ユーザーが使い続けてもらうことがビジネスの前提になる。使ってもらえなかったり、すぐに使うのをやめられてしまうと、サービスを継続できなくなるから、ユーザーをつなぎとめておく必要がある。だから機能と同じくらい使い勝手に重点が置かれることになる。デザインやユーザビリティの良さは他サービスとの差別要素にもなる。

これまで日本企業はユーザビリティにほとんど気を配ってこなかった。フィーチャーフォンやハードディスクレコーダーのUIを見ればわかる。だからWebサービスにおいては、ベンチャー企業に勝算があると思う。彼らはユーザビリティを向上させることの重要性を知っていて、新しい手法をサービスに取り入れる柔軟性もある。ただ、使い勝手のよさというものは、機能比較表みたいなものには現れないから、実際に使ってもらうためのハードルは高い。

普段何気なくつかっているAmazonのメインメニューにはあるしかけがなされている。ユーザーが最初のメニューをクリックして、右側のサブメニューにマウスカーソルが移動するまでのあいだ、多少マウスカーソルが上下にずれても、目的のサブメニューが開き続けるようになっている。これはプログラマーならわかると思うが実現するのは意外と難しい。

なぜAmazonのメガドロップダウンメニューはスムーズに操作できるのかという秘密 - GIGAZINE

Amazonのメニューのふるまいを実現するためには、

  1. デザイナーがこのふるまいをデザインできること
  2. プログラマーがデザインを実装できること
  3. 意思決定者がこのデザインの必要性を理解して、意思決定できること

をすべて満たす必要がある。デザイナーとプログラマーの距離が近く、意思決定者がユーザビリティの重要性を理解している組織でなければ実現できない。

使いやすさのコスト

海外にいってみると、使い方がさっぱりわからなくて困ることがある。大げさでなく、ドアの開け方がわからないというようなことはざらにある。

先日アメリカに行ったときに、モーテルでシャワーを浴びようとしたら、シャワーの出し方がまったくわからなかった。下の蛇口からは出るが、シャワーから出ない。

f:id:ryokdy:20140520224605j:plain

中央の部分。温度調節はできるがシャワーの使い方は書かれていない。

f:id:ryokdy:20140520224619j:plain

正解はここに書かれてあった。蛇口のところにある輪っかを下に引くのだそうだ。そんなんわかるか。

f:id:ryokdy:20140520224636j:plain

ついでに洗面所の蛇口。左にひねるとお湯が出るのかと思いきや、右にひねるとお湯。

f:id:ryokdy:20140520224724j:plain

アメリカはUI/UX研究の先進国であるが、すべてのものが使いやすいわけではない。むしろ使いにくいもののほうが多い。これは日本人にとっては励みにはなる、かもしれない。

余談だが、東京の飲食店には券売機が置いてあるところが多い。店に入るときに券売機で券を買って、注文するシステムだ。

f:id:ryokdy:20140508114310j:plain

わたしはいつも券を買ってから、おつりを出そうとしてあのプシュッとなった目立つボタンを押してしまう。間違いなく毎回押す。このボタンは取り消しのボタンらしい。なぜほとんど使わない取り消しのボタンがいかにも押したくなるような外観なのかもわからないし、そもそもおつりのボタンと別にする理由もわからない。

エレベーターには、開ける、閉めるの2種類のボタンがついているのが普通だ。わたしの会社が入っているビルのエレベーターは、センサーが人の出入りを検知して、出入りがなければすぐに閉まるようになっている。だから閉めるボタンを押すことはほとんどない。ときどき、せっかちなおじさんが誰かが降りるたびに閉めるボタンを連打しているのを見るとなんとなくかわいそうになってくる。閉めるボタンが必要なのはエレベーターが馬鹿だからだで、昔テレビのリモコンにコードがついていたのと同じようなものだ。本来不要なものをなくすにも、コストはかかる。